Q&A「嫌いな人や苦手な人に壁を作っちゃダメですか?」

今回は「自分と他人との境界線をなくすと、慈悲心が生まれる」というお話についてご質問をいただいたので補足をしていきます。

Q:嫌いな人や苦手な人にも心を開かないとだめですか?

※今回は、人に対して壁を作ることは良くないことなのかどうかというお話をしていきたいと思います。これは、ご質問頂いた内容を、ご質問内容の詳細を紹介せずに、少し内容を変えて、お答えしているものです。ですので、一般論として受け止めていただければと思います。

自分と他人の境界線をなくすとなぜ慈悲心が生まれるのか

まずはそこからなのですか、
それがなぜかと言うと
誰もがみんな自分自身を愛しているからです。

≪理論編のお話≫

こんなお話があります。

古代インドにコーサラ国という大国がありました。その国のコーサラ王は、国を広げるために他国を攻めることもありましたが、仏教に深い関心を持ち、お釈迦様の教えを頻繁に聞きに行きました。
彼の妃マッリカーは、美しく、敬虔な仏教徒であり、謙虚な性格で知られていました。王は彼女を非常に愛していました。
ある日、コーサラ王はマッリカー妃に、「この世で一番愛しい人は誰か」と尋ねました。王は自分がその答えだろうと思っていましたが、妃は「この世で一番愛しいのは自分自身です」と答えました。この答えに王は驚きましたが、同時に彼女の正直さを理解しました。

そこで妃は王に同じ質問をしました。王もよく考えた末、「自分自身が一番愛しい」と答えました。このことをお釈迦様に報告すると、お釈迦様はこう説かれました。「人は誰でも自分を最も愛しています。同様に、すべての生命も自分を最も愛しています。自分を愛していることを知る者は、自分を他人に重ねて、他人を害してはなりません。」

人は、いいえ人以外の全ての生き物も、
自分自身を愛しています。

これは間違いのないことです。

だから、
他人についても、
自分自身のことだと思えるようになれば、
それは、自分自身のことのように
大切に思えるようになるのです。

さて、そうは言っても、
私たちの人生は、
そんな簡単に全ての人を
自分と同じように愛することは
できません。

時には人に対して
壁を作ってしまうことも
あるでしょう。

人生はそのようにして
自分自身を守っていく時期が
誰にでもあるものです。

ただしだからと言って、
その壁を持ち続け
生きていって良い
というわけではありません。

人間には成長段階
というものがありますが、
私たちは、
人生をかけてどこまでも
この心を磨いていくことが、
この世に生まれた意味と
捉えているわけですから、
やはり、理想を言えば
上を目指していかなければ
いけません。

ただしこれは、
その人の状況によって
というものもあります。

人には、人生の中で
どこまでの段階を目指していけるのかが、
ある程度決まっています。

やはり、スタートラインが遅い人であれば、
精神性の目的の真ん中くらいまで来れば、
もう十分ということもあります。

ですので、
人に対する壁を取り除いた方が良いのか、
また、それを行う必要があるのだとしたら、
今なのか、もっと先なのかを考える必要はあります。

無理に壁を取り除こうとする必要はなく、
人に対して壁を作ることで、
自分の人生が停滞しているなとか、
そのせいでうまくいっていないなとか、
もっと人生を良くしたいなとか、
そういう思いが生まれてきた時に
壁の克服に向き合っていけば
良いのです。

ただいずれにしても、
人に対する壁を持つということは
良い事ではありません。

良寛さんという禅の偉人がいますが、
彼の歌にこんなものがあります。

いかなるが苦しきものと問うならば人をへだつる心と答えよ

何がこの人生の苦しみかといえば、
人を隔てる心であるというのです。

やはり、人に対して心の隔てを持っていたら、
それは自分の心を豊かにしないのです。

≪実践編のお話≫

さて、ここまで書いてきたように、
理想を言えば最後には
心の隔てをなくしていくこと、
そういう精神性を
目指していってもらいたいと
思いますが、
今日の現実生活に即して言えば、
もう少し現実的な対処も
必要になるでしょう。

そこで、加えて、
現実生活に即した
実践的なお話をしましょう。

まず、「この人は私の人生には不要だ」
と思う人がいたら、
壁を作っても構いません。

世の中には必ず、
人を害する悪意がある人や、
表面的には悪意に見えなくても、
自己愛(自信心の高さ)から
他人に害を及ぼす人がいます。

そういう人に巻き込まれると、
自分の心も人生も取り乱されます。

もちろん最終的には、
そんなような人たちの中にあっても、
心満たされないような人間に
なってほしいと思いますが、
それはかなり難しい課題です。

ですので、
現実的に大切なことは、
その相手(環境)を離れる

ということです。

そもそも瞑想を行う理由は
心の苦しみは取り除くことです。

もちろんその先に、
瞑想を通して、
聖者の域を目指していく
という大きな目標はありますが、
それは一部の修行者の目標です。

私たち一般的な人間が
瞑想をする一番の目的は
心の苦しみを取り除き、
幸せな人生を送ることに
他なりません。

そしてそのために、
心を鍛えることはもちろんですが、
知恵を磨いていくことも大切です。

つまり考え方ですね。

もし、なんであれ、
自分の今の考え方が
苦しみを作り出しているのだとしたら、
それはその考え方を
変えていく必要があります。

見方が変われば世界が変わります。

だからもし、
人に対して壁を作ってしまうことが
ダメなことかもしれないと
悩んでいるのなら、
「人に対して壁を作っても良い」と
割り切ってしまうことが大切です。

その上で、
それはそれとして、
自分の人生の課題を克服し、
心を成長させていくためには
どうすれば良いかを考えていきます。

具体的にどうすれば良いかというと、
「この人は私の人生にはいらない」
と決めた人がいるなら、
その人においては壁を作っても構いません。
ですが、他の部分で、
信頼できる人を見つけ、
自分が心を開ける場所を見つけ、
少しずつ壁を取り除いていける相手を
見つけていくことです。

人生の課題というのは
絶対的である必要はありません。
相対的で良いのです。

苦手とする部分や
ダメな部分があるのだとしたら、
それを克服しようと
頑張るのも一つでしょう。

しかし、
それはそれとしておいて、
他の部分の良いところを
伸ばしたり、
他で減らしてしまった徳を、
他の部分で補ったりすれば
よいのです。

今の段階で壁を壊せば、
あなたを傷つけてくる人が
必ずいます。

ですから、
その壁はそのままで構いません。

ですが、ほかで心を開ける相手を見つけ、
自分と同じように大切にできる人を見つけ、
そこで生きていってください。

自分の生きる場所を見つけるということです。

その中で心の成長を
目指していっていただければと思います。

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